REACH規制 コバルト化合物とは?

 亜鉛めっき、三価クロメートの処理薬品に1~10%程度のコバルト化合物が含まれている物があります。三価クロメートの耐食性を補う重要な物質です。これがREACH規制の第四次SVHC高懸念物質リストになり業界でも話題になりました。現状では情報伝達のみで大丈夫であるMSDSPLUS等に記載されるようにもなり、不安がる需要家は多いようです。

2010年8月30日 REACH 第4次SVHC追加候補 11物質
Cobalt(Ⅱ) sulphate(硫酸コバルト(Ⅱ)):10124-43-3
Cobalt(Ⅱ) dinitrate(硝酸コバルト(Ⅱ)):10141-05-6
Cobalt(Ⅱ) carbonate(炭酸コバルト(Ⅱ)):513-79-1
Cobalt(Ⅱ) diacetate(酢酸コバルト(Ⅱ)):71-48-7

2011年2月21日 REACH 第5次SVHC追加候補 7物質+塩化コバルト(Ⅱ)
Cobalt dichloride (二塩化コバルト、無水 塩化コバルト(Ⅱ)):7646-79-9

 まず第一に現時点(2016年)では使用禁止ではありません。第二にREACHの述べる「認可」が必要な物質でもありません。

 第三に、亜鉛めっき三価クロメートの薬剤に含有されている物質であり「めっき加工品」へのコバルト含有率は下がります。また、「めっき加工品」に含有されるものは「コバルト化合物」か「金属コバルト」なのか。これは我々めっき業者では解析はできないのでわかりませんが、恐らく化合物の状態では存在出来ないのではないかと思っています。
 この考え方はクロームめっきと同じです。クロームめっきはROHS指令対象物質の六価クロムを大量に使用してめっきします。しかし析出した「金属クロム」は無害であり規制対象外です。グリーン調達で問題視されるケースもありますが、需要家の独自の判断で使用を控えるさせるケースもあるようです。基本的には禁止される由来のないものであり、コバルト化合物も似たような扱いなのではないかと思います。

 第四に、同じコバルト化合物でも酸化数の違いにより、CAS番号が異なる物が存在します。弊社で把握している薬品だけでも、上記のCAS番号とは異なるコバルト化合物を使用している物があります。CAS番号が違うので情報伝達が不要、でも和訳の化合物名は同じなので念のため伝達しておく。このような雰囲気があります。

コバルトフリーの流れ

 大手自動車メーカーで導入検討の流れがあり、薬品メーカー各社でも開発、早いメーカーでは販売開始しております。既に弊社でも取り寄せて実用試験を済ませております。技術的には現行の三価クロメートの延長線上で管理できそうです。しかしながら、現時点では基本的に使用してよい物質なので、メーカー独自に禁止するのはいかがなものかと思われます。
 現時点で禁止しているメーカーはありません。検討をしているという噂のみです。

REACH規制の大まかな流れ

REACHのSVHC(高懸念物質)→ 認可候補物質  → 認可対象物質リスト(Annex XIV)に掲載

 認可対象候補物質(SVHC)を0.1重量%を超えて含有する成形品をEU域内で製造または輸入する事業者は、それを使用する利用者に対して、当該製品を安全に使用できる条件を示した情報を伝達しなければなりません。
 認可の対象物質となると認可をもらわないと使えないということになります。